* キノコとワカメ *










先輩。」


「なぁにヒヨ?」


「ヒヨはやめて下さい。」


「どうして?可愛いのに・・・。」



そんなに悲しそうな顔しないで下さい。

弱いんですから・・・。



「ヒヨ、嫌?」


「・・・もういいです。」


「うん、ありがとう。」



その笑顔は反則ですよ。

やめて下さい。



「それで、用件は?」


「門の前にいる他校生をどうにかしろと跡部部長が言っています。」


「けーちゃんも自分で何とかすればいいのにねぇ・・・。」



あの跡部部長をそんな呼び方するのはこの氷帝ではひとりしかいないだろう。

先輩だからこそできること。



「それで、誰がいるの?」


「ワカメです。」


「ワカメ?」


「はい、ワカメです。」


「私ワカメに知り合いはいないんだけど・・・ヒヨは知ってる?」


「・・・知りません。」



本当は知っている。

立海の切原赤也。

新人戦で俺はアイツに負けた。



「そっかぁ・・・でもどうして私なの?」


「すみません、俺も跡部部長に言われて・・・」


「うん、ありがとうヒヨ。けーちゃんにちゃんと聞いてくる。」


「はい。」


「ヒヨも一緒に行く?」


「行きます。」



俺は先輩が好きだ。

だからいくら跡部部長だからといってふたりきりにさせる気にはなれない。




















「けーちゃん!」


に日吉・・・日吉、言ってないのか?」


「ちゃんと伝えましたよ。」


「そう、ヒヨはちゃんと伝えてくれたの、でもね・・・意味わかんないもん。」


「・・・切原がお前の名前を叫んでるんだよ。」


「切原?誰?」


「知らないのか?」


「うん、初めて聞いたよその名前。ワカメじゃなかったの?」


「日吉!何て伝えたんだ?」


「校門にワカメがいます。と伝えました。」


「・・・・・・。」



アイツはワカメだろう。

あの髪型はワカメだ。



「ワカメ=切原?」


「・・・・・・そうだ。」


「うーん・・・よくわかんないね。」


「本当に知らないのか?」


「知らない。」


「日吉、連れて行け。」


「校門にですか?」


「ああ、一般生徒から苦情が来ている。」


「・・・わかりました。」


「えっちょっと、私なしでお話進めてる?」


「行きますよ、先輩。」


「う、うん?ってどこに行くの?」


「校門です。」


「ワカメに逢いに?」


「そうです。」


「うん、そのワカメは見てみたい気がするから行く。」



本当は逢わせたくない。

切原が先輩の名前を叫んでいると言うことは先輩に逢いに来たということ。



先輩は本当に知らないんですよね?」


「うん、初めて聞く名前だよ。」



先輩は知らない。

でも切原は知っている。

つまり・・・切原は先輩に何らかの想いを抱いている。


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