* 動き出した歯車 *
「宍戸やん、邪魔したらあかんで?」
部室から出てきた忍足に言われたのがこの言葉。
邪魔?
意味わかんねぇー・・・。
「あっ宍戸くん。」
「・・・・・・?」
何でいるんだよ。
しかも跡部と向かい合って座っている。
・・・・・・記憶が戻ったのか?
「じゃあ帰り待ってるね・・・跡部くん。」
「あぁ、この中にいろよ。」
「そ、それは悪いよ?」
・・・・・・戻ってねぇみたいだな。
は跡部のことを苗字で呼んだ。
「悪くねぇーよ。」
「・・・・・・。」
困ってるみたいだな。
は結構顔に出やすくて見ていて飽きない。
「この中にいたほうがいいって俺も思うぜ?」
助け舟を出してやる。
多分、今のは跡部を遠い存在の人と思っているから・・・。
「・・・ありがとう。」
俺だってが好きだ。
それは忍足たちとは変わらない。
別に跡部から奪おうと思っているわけでもねぇ。
奪えるわけないしな。
それでももし、跡部がを傷つけるというなら・・・・・・まぁありえないけど。
今の跡部は跡部であって跡部じゃない。
この状態の跡部からを奪おうなんて考えは浮かばなかった。
「先輩たち、いつまで中で話してるつもりですか?」
「あっごめんね、日吉くん。私、話し込んじゃって・・・。」
「あぁ、先輩がいたんですね。なら仕方ないです。」
確かにそうだ。
あの頃の跡部は何かとに構っていた。
練習中も何度も何度もが待っている部室へと足を運んでいた。
俺たちも仕方がないって諦めていたな・・・。
「跡部くんも宍戸くんも日吉くんも、練習頑張ってね。」
「はい。」
「サンキュ。」
俺たちにも声をかけてくれていたな。
コイツは誰にでも平等に接していた。
恋人である跡部と俺たち、部室内では本当に対等に・・・まぁそれも跡部が不機嫌になる原因のひとつだったな・・・。
それをの前で見せないところがまた跡部らしいというか・・・。
「行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
・・・・・・跡部はやっぱり跡部だな。
ふたりのこの会話。
新婚夫婦かって忍足が騒いでたな・・・。
記憶がないくせに自然とその言葉が出てくる。
多分日吉も俺と同じことを思っているんだろうな。
なぁ跡部、はやく思い出してやれよ。
「・・・びっくりした・・・。」
まさか景吾くんからそのセリフが聞けるとは思わなかった。
私はちゃんと返せたかな?
ねぇ・・・私はまだあなたを想っていてもいいですか?
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