* 遠い存在 *
俺がぶつかったあの人。
どこかで見たことがあるような気がした。
「誰だろ・・・。」
どっかで見たことがある。
絶対に。
「そういやここって幸村部長のいる病院じゃん。」
あの人の病室から出てぶらぶらしてたら幸村部長の病室の前。
隣じゃん。
副部長たち来てんのかなー柳先輩なら知ってるかもしれない。
結構何でも知ってるし、訊いてみて損はない。
わからなくてもいい。
「しっかし、可愛い人だったなぁー。」
俺に向かって優しく微笑むあの人。
まさしく天使の微笑。
「お見舞いとか行ってもいいかな・・・。」
あの人は事故だって言ったけど、やっぱり俺にも関係がある。
それに俺自身があの人に逢いたいと思ったから。
「赤也じゃん!」
「あっ丸井先輩ー。」
「何やってるんじゃ?」
「あ、えっと・・・女の人にぶつかって、その人記憶喪失になっちゃったみたいなんっすよ・・・。」
「それでその女性は?」
「この病院に入院みたいっす。」
「記憶喪失と言うことは大変じゃな。」
「名前すら覚えてないみたいなんっすよー。あっ柳先輩、その人のこと知らないっすか?」
「・・・一般人のことはいくら俺でも知らない。」
「でも、俺どっかで逢ったことあるような気がするんですよねー。」
「逢ったことがある?」
「わかんないんすけどね。」
「逢ってみればいいじゃろ。」
「・・・そうだな。」
「切原くん、その女性の病室は?」
「幸村部長の病室の隣っす。」
「行ってみようぜぃ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!今日はダメっす!」
「何で?」
「今日入院したんっすよ、とにかく今日はダメ!」
「確かに赤也の言うとおりだな。」
「真田副部長、俺心配なんで明日部活休みます。」
「うむ、仕方あるまい。」
「俺も行こうかのぉ。」
「俺も行くぜぃ!」
「私も行きましょう。」
「俺も行こう、何かわかるかもしれん。」
「ジャッカルも行こうぜ!」
「ああ。」
「貴様ら・・・たるんどる!!」
「弦一郎も行くだろう?」
「別に来なくてもいいですよー!」
柳先輩以外の先輩たちは!
先輩たちみんな絶対あの人に惚れるって。
あの天使の微笑みに!
「赤也の保護者として行くべきだと思うが?」
「わかった、行こう。」
「えぇー!」
名前もわからないあの人。
それでも俺は・・・あの微笑が忘れられない。
やっぱり見たことがある。
でも、近くで、ではない。
多分、遠くから見た気がする。
アノヒトハイッタイダレ?
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