* 怯えた瞳 *
「・・・、です。」
突然の転入生。
4月ならわかる、でも今は5月。
「少し前までは・・・氷帝にいました。」
氷帝からの転入生。
「よろしくお願い・・・します。」
怯えるような表情に俺は見えた。
多分、他の奴等は気付いていない。
「席はそうだな・・・仁王、手をあげろ。」
どうやらこの女は俺の隣になるらしい。
「仁王雅治じゃ。よろしく。」
「・・・です。」
隣に来た女の顔は・・・可愛らしい顔。
怯えるような表情がなければいいんじゃがな・・・。
「仁王!に校内案内してやれ。」
担任の言葉に軽く頷いておく。
「じゃあ、行くか?」
「何処へ・・・?」
「校内案内じゃ。」
「いいの?」
遠慮がちに訊いてくる女。
こんな女は初めてかもしれん。
「あぁ、構わんぜよ。」
「ありがとう。」
怯えた表情のまま、控えめに笑う女。
一瞬目を奪われた。
「行くぜよ。」
「・・・はい。」
「?!」
「・・・ブン太?」
「やっぱじゃん!こんなとこで何やってるんだ?」
「なんじゃ、知り合いか?」
「幼馴染なの。」
「久し振りじゃん!って氷帝じゃなかったっけ?」
「はウチのクラスの転入生じゃ。」
「え?!いつの間に?!」
「・・・今日、転入してきました。」
「それならそうと言えよ!」
「ごめんね。」
丸井と話しているこの女は少し怯えが消えていた。
安心しているのだろうか。
「謝んなって!家はどうなったんだよ!?」
「学校の近くのマンションでひとり暮らししてる。」
「今度教えろよな!遊びに行ってやるぜぃ☆」
「うん。」
「その学校の近くのマンションって何処じゃ?」
「えっと・・・立海の近くのベビーピンクのマンション。」
「ベビーピンクってことは仁王と一緒じゃねぇ?」
「そうなの?」
「あぁ。」
「今日帰りん家寄っていい?!」
「う、うん。」
「じゃあ部活終わるの待っててくれよな!」
「うん、わかった。」
「やりぃ!じゃあなー!仁王!のことシクヨロ☆」
「仁王くん、何階に住んでるの?」
「8階じゃ。」
「え・・・。」
「もか?」
「・・・うん。」
「そういえば、隣空いてたような気がするんじゃが・・・。」
丸井と別れてからまた怯えたような表情をしちょる。
俺に怯えとるのか?
「808号室です。」
「俺は807じゃ。」
「お隣、ですね・・・。」
「みたいじゃな。」
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