* 怯えた瞳 *
「・・・・・・。」
あの日から、この名前を呼ぶことを苦しく感じるようになった。
以前は何度も何度も繰り返し呼んでいた名前。
愛しい。
愛しい。
愛しい。
愛しい。
愛しい少女の名前。
でも、今は・・・呼ぶことさえ躊躇ってしまう。
それはきっと俺だけじゃない。
アイツ等も・・・。
「もしもし、跡部だ。」
携帯を取り出し真田に電話を掛ける。
腕の中の少女は今、立海に通っている。
「何か用か?」
「テニス部にを知る人間はいないか?」
「?」
「おい!真田貸せ!!」
どうやら知っている人間がいたらしい。
立海のテニス部レギュラーに・・・
「もしもし!」
「・・・誰だ?」
「立海3年、丸井ブン太!」
あぁ、ジローの奴が憧れてるとか言ってやがった奴か。
誰でもいい、を知っていて、傷つけようとする人間でなければ。
「どういうことだよ!は何処にいるんだ!教えろ!!」
「・・・俺の車の中にいる。」
「何やったんだよ!場合によっては絶対にゆるさねぇーからな!」
「・・・今、は意識を失っている。今はまだ起こしたくない。」
目覚められてどうすればいいのか、今の俺にはわからない。
まだ、時間が必要だから・・・。
もう少しだけ、時間をくれ。
「・・・わかった。で、今何処だよ。」
「立海の門の前だ。」
「迎えに行く、待ってろよ!」
「あぁ。」
ツーツーツーツー
そのまま通話は切られた。
真田に携帯を返し走り出そうとした。
「丸井!俺も行く!」
俺を止めたのは仁王。
の名前に反応したらしい。
・・・それって愛じゃん。
なんて言ってられる状態じゃないから言わないけど・・・。
を好きな人間はやっぱり多い方が嬉しい。
当然じゃん。
ライバルが多くなっても・・・が笑顔でいれるならそれでいい。
「何があったんじゃ?」
「わかんねぇーけど、跡部といることだけは確か。しかも意識がないんだって。」
「・・・・・・。」
「とりあえず門の前にいるみたいだし、話は後!」
「わかった。」
仁王との話をやめ、俺は全速力で走った。
大切な。
大切な。
大切な。
大切な。
大切な少女の許へ・・・・・・。
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