* 大切な存在 *
何でこの人がこんなに傷つかなきゃいけないんだろう。
この人はこんなにも・・・傷ついているのに。
「せんぱーい?」
「・・・・・・。」
反応がない。
ただ俺に引っ張られてるだけ。
ただ歩いているだけ。
「せんぱーい?」
「・・・・・・。」
名前で呼んでみた。
でもやっぱり反応はない。
なんか悔しい。
「先輩、お願いだから俺を見てよ・・・。」
あなたの瞳に俺を映して?
お願いだから、俺を見てよ。
「先輩?」
さっきまでちゃんと覚束ないながらも一緒に歩いていた先輩の足が止まった。
一体どうしたんだろう?
「先輩?!」
息遣いが荒い。
おかしい。
先輩のほうを向いておでこに手を当ててみる。
「何で言ってくれなかったんっすか?!」
熱い、かなり熱い。
熱がある、しかも高い。
何で俺に言ってくれなかったんだろう?
そんなに俺は頼りなかった?
何で俺は気付けなかったんだろう・・・・・・。
もっと早く気付いていたら・・・!
「・・・後悔しても仕方ないっすね。」
そうだ、今は後悔している場合じゃない。
病院。
連れて行かなきゃいけない。
浮かんだのは幸村部長の顔。
あの人なら・・・先輩に笑顔を与えてあげれるのかな・・・?
どうして誰も私を裁いてくれないの?
私は罪人なのよ。
はやく裁いてよ。
壊れた人形はもう動いちゃダメなの。
壊れた人形は消えなきゃいけないの。
ねぇ・・・私を裁いてよ。
はやく、壊れた人形を裁いてよ・・・。
罪を犯した壊れた人形を・・・・・・。
「もしもし、俺、赤也っす!」
とりあえず丸井先輩に電話する。
俺が知ってる中であの人が一番、先輩に近い人だから。
「どうしたんだよ?」
「先輩が・・・」
「?!」
「今、病院にいるんっすよ。」
「病院?!」
「なんか熱があるっぽくて・・・幸村部長の病院に連れてきたんですけど・・・。」
「わかった、今すぐ行く!!」
声だけでもわかる。
丸井先輩がかなり焦ってるってこと。
本当に心配してるんだ、この人は・・・。
「俺だって心配してるんっすよ・・・先輩・・・。」
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