* 伝えなきゃいけない言葉 *










「何をしている。」


「手塚・・・・・・。」


「菊丸に・・・?!」



何故お前がここにいる?

一体、何故・・・?



「ごめん、俺、戻るにゃ。」


「あ、あぁ・・・・・・。」


「・・・ごめんにゃ、ちゃん・・・・・・・。」



そう言い去っていく効く丸。

雨の中残されたのは俺と・・・・・・。



「とりあえず室内に入ろう。」



頭から水に被ったように雨に濡れているの頭に自分のジャージを掛けてやる。



「風邪をひくといけないからな。」



今の彼女には俺の姿が見えているのだろうか・・・。

壊れた人形といわれる彼女に・・・。

見えていなくても構わない。

ただ、目の前の少女が俺を拒絶することが無いのならば・・・・・・。





















『国光、別れよ。』


『・・・何故だ?』


『あのね、国光には私は重荷になっちゃうの。』


『・・・・・・。』


『テニスを大切にして。』


『・・・・・・。』


『大好きだよ、国光のこと。

でもね、テニスを大切にして欲しいの。テニスをやってる国光がすごく素敵だから。』


『・・・・・・。』


『勝手なこと言ってごめんね、本当に大好きだよ、国光。』


・・・・・・。』




















「・・・何故ここに来た?」



自分から進んでここに来るとは思えない。

ここには菊丸がいる。



「・・・頼まれたの、渡して欲しいものがあるって・・・・・・でも、渡せなかったの。」



油断すれば聞き逃してしまいそうな声で発せられた言葉。



「渡すものとは?」


「・・・これ。」



目の前に差し出されたものは封筒。

差出人は「

菊丸に宛てられた手紙。



「ふたりはね、お手紙とかも送りあってたみたいなの・・・・・・。

これががポストに投函し忘れちゃった手紙、あの日に出そうとしていたみたい、なの・・・・・・。」


「・・・。」


「これを、渡して・・・・・・。」


「・・・わかった。」


「ありがとう、国光・・・・・・さよなら。」



それだけ言い、は帰って行った。

俺には止めることが出来なかった。





















「菊丸。」


「・・・ちゃん、帰った?」


「あぁ。」


「・・・・・・。」


「これを預かった。」


「何だにゃ?」


「お前宛の手紙だ。」


「・・・・・・?!」


「あの日投函し忘れてしまったものらしい。」


「・・・わざわざこれを届けにきてくれたのかにゃ・・・ちゃん・・・・。」


「あぁ、そうらしい。」


「・・・・・・ちゃんに俺、悪いことしちゃったんだよにゃ・・・。」


「・・・・・・誰も悪くないだろう。」



そう、誰も悪くは無い。

人間として、当然のこと。

菊丸が抱いている感情も。

が抱いている感情も・・・・・・。




 







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