* 壊れた人形 *










「・・・が窓から落ちたらしい。」



部活が始まる前。

息切れするほどのスピードで走ってきたのだろう跡部部長がそう言った。

先輩が窓から落ちた・・・・・・と。



「何やて?!」


「今病院にいるらしい。」


「早く行こうぜ!!」



立ち上がってドアの前までもう行っている向日さん。



先輩の状態は?!」



跡部部長に詰め寄る鳳。



「・・・・・・危険な状態らしい。」



危険な状態を物語っている跡部部長の顔。

本当はここに来るよりも先に病院に向かいたかったって顔をしている。



「「「「「「「・・・・・・。」」」」」」」



「強制はしねぇーよ。行きたい奴だけ行けばいい。」


「・・・・・・俺たちは行ってもいいのかな・・・?」



俺の隣にいた芥川さんが呟いた。

確かにそうだ。

先輩はまだ俺たちが見えていない。

壊れた人形だから・・・・・・。



「いいに決まってるだろ!!」


「疑問がある奴は行くな。」



突き放すような言葉。

だけど・・・確かにその通りだと思う。

疑問を感じるということは心が乱れているということ。

そんな状態では行っても意味がない。



「「「「「「「・・・・・・。」」」」」」」



「じゃあな。」


「跡部は行くん?」


「当たり前だろ。」


「そうやな・・・俺も行くで、姫さんが心配やし。」


「俺だって行くからな!!」


「俺も行くぜ、が心配だからな。」



どんどんと出て行く先輩たち。

残ったのは芥川さんだけ。



「・・・どうするんですか?」


「・・・・・・行くよ、ちゃんが心配だし・・・傍にいたいから・・・。」



芥川さんの瞳には疑念は感じられなかった。

答えは決まったらしい。

今から俺たちはあなたの傍に行きます。

だからどうか・・・無事でいて下さい。




















『おはよー若。』


『おはようございます。』


『毎日寒いよねぇー。』


『マフラーも手袋もしてるのに寒いですか?』


『うん、寒いよー。』


『・・・仕方ないですね、どうぞ。』


『マフラー貸してくれるの?』


『寒いのでしょう?』


『うん。』


『二重に巻けばちょっとはマシでしょう。』


『若は?』


『俺は今から動くので平気です。』


『そっかぁ・・・うん、じゃあ借りちゃうね。ありがとう。』




 







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