* 女神に出逢う *
初めてあの人を見た時。
目を奪われた。
「・・・あれ誰っすか?」
青学のテニス部のレギュラーになってから数日経った時。
初めてあの人を見た。
グランドの真ん中でテニスボールをひっくり返すあの人を。
「彼女は、マネージャーだよ。」
「へぇ・・・マネージャーなんて居たんですね。」
「うん、そういえばランキング戦の時は偵察に行ってたね。」
「ふーん・・・」
「気になるなら行っておいで、喜ぶから。」
「・・・ウィース。」
ボールを拾っては籠に入れていく。
部員たちに「ごめん。」の言葉を繰り返しながら。
「あっごめんね。」
「手伝うっす。」
「ありがとう、君は部員さん?」
「越前リョーマ。」
「ああ、わかった、レギュラーさんね。」
「そうっす。」
「私は、よろしくね。」
可愛いと思った。
目の前のこの人が。
「よろしくっす。」
ボールを拾うことをやめて俺に握手を求めるこの人は。
俺よりも小さかった。
「あー越前くんも私より大きいのねー。もう、ここの部員たち、特にレギュラーたちってばみんな大きすぎるのよ。」
「・・・先輩って何年?」
「3年生v」
「(見えない・・・)」
「あっ今見えないって思ったでしょ?」
「・・・すいません。」
「別にいいもん。」
頬を膨らませて怒る目の前の先輩は、やっぱり可愛かった。
年の割にはあどけない笑顔と大きさ。
「かわいいっすね、先輩。」
「私的には名前で呼んで欲しいな。それと、私は可愛くないよーうん、絶対。」
「じゃあ先輩。ちなみに先輩可愛いですよ、本当に。」
「越前くん、先輩をからかっちゃいけません!!///」
真っ赤な顔を手で隠す先輩は可愛い。
でもひとつ気になったことがあった。
「・・・名前。」
「え?」
「俺は先輩って呼んでるのに・・・ずるいっす。」
「あーごめんね。」
「呼んで下さい。」
「リョーマ?」
「はい。」
「交流会しなくちゃねv」
「はぁ?」
「そうと決まれば用意しなくちゃ。」
「先輩?」
「だってせっかく期待のルーキーさんだもんv国光に言わなきゃv周助と英二にも手伝ってもらおうv」
「・・・。」
「あっリョーマは頑張って練習しててねv」
ついていけなかった。
ひとりで完結してしまったこの人に。
「楽しみにしててね、交流会v」
笑顔を向けられてしまったから。
あの、俺の心を奪った笑顔を。
「ウィース。」
俺は返事しか出来なかった。
それでも先輩は微笑んでくれたから・・・
「ってボール拾い残してるし・・・」
走っていく先輩を見送りながらボールを拾った。
あの人がひっくり返した籠の中に入れながら。
「国光!交流会しますからv」
「・・・意味がわからん。」
「だから、交流会、リョーマのv」
「・・・わかった。」
「ありがと、国光v」
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