* 誰にも勝てない *
悲しそうな瞳の女神を・・・
俺は見たくなかった。
目が合った。
悲しそうな・・・女神と。
女神の瞳は俺を責めたりはしない。
ただ、悲しそうな瞳を向けるだけ。
「国光!」
「・・・大丈夫だ。」
「でも・・・っ」
「お前にはまだしなければならないことがある。」
「・・・うん、わかってる。」
「頼んだぞ。」
「了解・・・。」
「先輩。」
「リョーマ・・・」
「俺、勝ちますから。」
「・・・うん。」
ごめんね、私は何も出来ない。
「先輩のためにも。」
それなのに”私のため”にも戦ってくれるの?
「うん・・・。」
「手塚部長のためにも。」
「うん、ありがとう・・・っ」
「応援よろしくっすよ!」
「まかせて。」
私に出来ることは見守ることだけ。
応援することだけ・・・
どうして私はそれしか出来ないんだろう・・・
先輩が俺を見ていてくれる。
だから、負けられない。
先輩たちのためにも。
先輩を全国へ連れて行くためにも。
ここで、負けられない。
試合終了後の先輩は泣いていて。
でも、瞳はすごく嬉しそうだった。
声にならない声で「ありがとう」と言ってくれた。
「先輩。」
「・・・。」
「約束、守ったっすよ。」
だから笑って。
俺のために。
「うん・・・ありがとう・・・本当に・・・っ
ごめんね、私は何も出来なくて・・・本当にごめんね・・・」
「そんなことないっすよ。」
「え?」
「先輩が見守ってくれてるからこそ・・・
俺は・・・俺たちは頑張れるんっすよ。」
「・・・。」
「先輩がいつも笑顔で接してくれるから頑張れるっす。
他の先輩たちはどうだか知らないけど、俺はそうっすから・・・」
多分他の先輩たちもそうだと思う。
俺以上に・・・
先輩のことを必要としている。
「だから先輩、笑って?」
「本当にありがとう、リョーマ・・・。」
綺麗な笑顔。
先輩の笑顔があるから・・・
その笑顔を曇らせたくない。
先輩の笑顔のために俺は戦う。
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