* 誰にも勝てない *
女神に逢った。
勝利の女神と呼ばれる人に。
「はい、どうぞ。」
目の前に差し出される。
綺麗に包まれた飴。
「・・・。」
今の俺には貰う余裕なんてない。
苛立ちが募る。
「日吉。」
「跡部部長・・・」
部長が言いたいこともわかる。
目の前に差し出された飴をとれと。
「景吾。」
鈴が鳴るような声。
心地よい、声。
それでも俺は受け取ることが出来ない。
「あなたには悪いですが、いりません。」
「・・・そう。」
「失礼します。」
「せっかく美味しいのに・・・」
そう言って飴を食べ始める目の前の人。
「お願いがあるの、少し屈んで?」
言われたとおりに屈むと突然・・・
唇が重なる。
「美味しい、でしょ?」
口の中に入れられた飴。
甘さが口の中に広がる。
「私ね、勝利の女神なの。」
「・・・。」
「もちろん、言われてるだけだけどね。」
「・・・。」
「無理やりごめんね。
私ね、あなたがすごいと思ったのよ・・・それはみんなが思っていること。
それでも、みんなは言わないわ・・・あなたを傷付けることになっちゃうかもしれないでしょ?
言葉が欲しいなら私があげる。」
その言葉を聞いて、心が軽くなった。
「あなたは・・・何者なんですか?」
「、青学のマネージャー。」
「・・・!!」
「驚いた?
一応青学のレギュラージャージ着てるのよ・・・。」
「あなたは、他校の俺にまで気に掛けるんですか?」
「うん、お友達でしょ?」
青学の勝利の女神の話を聞いたことがあった。
まさしく・・・勝利の女神だと思った。
でも、彼女は青学だけの勝利の女神ではない。
「ねぇ、若って呼んでいい?」
「・・・?」
「私、お友達の呼び方は自分で決めるの。」
「そうですか・・・
じゃあ俺はあなたのことを何と呼びましょう?」
「うーん・・・名前で呼んでくれればそれでいいよ。」
「わかりました、さん。」
「私ね、気に入った人は名前で呼ぶの。
たまに違う人もいるけど・・・。」
「俺はあなたに気に入ってもらえたってことですか?」
「うん、お気に入りv」
「・・・。」
跡部部長もお気に入りなのだろうか。
名前で呼ばれている。
「若みたいな人、私好きよ。」
「なっ・・・///」
「私ね、頑張ってる人が好きなの。
でもいつも頑張ってるなんて疲れちゃうよ?
たまにはおやすみもしなくちゃダメ。」
「・・・。」
「言葉が欲しいならいつでも言ってね。
私はこんなことしか出来ないけど・・・」
「ありがとうございます。」
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