* 儚い笑顔のあなた *










どうしてあんなにも笑顔が儚く見えるのだろう・・・

一体どうして。




















先輩。」


「リョーマ?」


「悲しそうな顔してるッス。」


「・・・やっぱりわかっちゃう?」


「何かあったんっすか?」


「ううん、たいしたことないから・・・」



悲しそうな顔。



「・・・俺じゃ先輩の力にはなれない?」



何か言ってよ、先輩。

俺じゃ力不足?



先輩!」


「は、はい?!」


「行こう!」


「え?どこへ?」


「ストリートテニス。」


「練習は?!」


「サボる。」


「だ、ダメよ!」


「いいんすよ、今日だけ特別!」


「でも・・・」


先輩がそんな顔してたら誰もやる気でないっすよ!」


「・・・。」


「行くっすよ!」



こんな無理やりなことしたくなかった。

それでも・・・先輩の笑顔が見たかった。


















「見ててください。」


「う、うん・・・。」



見せるのは壁打ち。

今日は誰も対戦相手になってくれる人がいないから。



「・・・すごいね、リョーマ・・・。」



壁打ちをやめて先輩の隣に座る。



「私もリョーマくらいテニスが上手かったらよかったのになぁ・・・」


「・・・?」


「この前言ったよね、1年生のとき国光とダブルス組んだって。」


「言ってましたね。」


「あの時すごく迷惑かけちゃったの。」


「迷惑ってどんな?」


「ダブルスなのに国光のひとり走りまわせちゃったこと自体が迷惑でしょ?」


「・・・。」


「みんなね、私ばかり狙ってきたの。」


「相手も男女ペアだったんすか?」


「ううん、男女ペアだったのは私たちだけ。」



わかる気がする。

先輩は運動神経ゼロ、しかもマネをやってる。

パートナーは手塚部長。

恨まれないはずがない。



「みんなね、国光とペア組んだのが羨ましかったみたい。」



しかも先輩可愛いし。



「私、運動神経ないでしょ?だから国光がね・・・真ん中に立っていろって言ったの。」


「あー・・・先輩が真ん中にいれば部長も動きやすいっすからね。」


「うん、でも逆に国光がいっぱい動くことになっちゃって・・・」


「ちなみに勝ったんすか?」


「うん、国光の圧勝。」


「ふーん・・・何かむかつく。」


「え?」


先輩、俺とダブルスしよ?」


「ええ?!」


「今から学校戻って、ゴールデンペア相手に。」


「リョーマに迷惑かかる!」


「いーっすよ。」


「国光だって言ってたもん二の舞はごめんだって。」


「やろうよ、ね?」



部長、言葉足りなすぎっす。

先輩が傷つくからもうしたくないだけでしょ?



「でも・・・」


先輩は真ん中にいてくれるだけでいいから。」


「・・・。」


「俺は決めたからね。」


「・・・わかったわよ・・・どうなっても知らないから。」




 







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