* 氷の城に迷い込んだ姫君 *










「どう言う意味だ?」


「そのままの意味です。」


「・・・。」


「あなたは私と関わることもなくなるわ。

ううん、今も関わっているわけじゃない、これ以上私に近づかないで。」


「ふざけるな。」



ビクッと震える身体。



「・・・。」


「お前に指図される覚えはねぇーよ。」



この女、気に入った。

柄でもねぇーが、俺はこの女に間違いなく惚れた。



「俺はお前と関わる、覚悟して置けよ、。」



名前で呼んでやった。



「そんなの・・・本気じゃないくせに。」



否定する言葉。

この女、何かある。



「俺は本気だぜ?」


「少なくとも、私のことを知ったらあなたは私に関わったことを後悔するわ。」


「・・・。」


「ヒントをあげる。私ね、青学の男子テニス部のマネージャーだったの。」


「・・・。」


「知るのなら、早いほうがいいわよ。」


「訊いてやるよ、お前に。」



唖然とする顔。

その答えを考えてはいなかったのだろう。



「・・・いいわ、話してあげる。」


「ああ。」


「その代わり・・・場所は変えて。」


「そうだな。」



話の重さはわかる。

この場所は不似合い。



「生徒会室でいいだろ。」



会議中のプレートでも下げていれば大抵のヤツは入ってこない。

近づく奴もいない。



「ええ、構わない。」



俺よりも随分小さい身長。

小さな顔に大きな瞳。

長く美しい黒髪。

顔は綺麗というより可愛い。

こいつの笑顔が見てみたいと思った。




















「私は、必要ない人間なの。」



生徒会室に入るなり言った言葉。

その声が生徒会室に響いた。



「だから私は・・・誰にも必要とされなかった。」


「・・・。」


「みんな・・・みんな・・・私を必要としなかった。」



大きな瞳から涙が零れた。

気づいた。

この女は自分を守るための仮面を被っているということに。



「私は必要ないのよ、あの場所にも・・・ここにも。」


「・・・。」


「あそこに私の居場所はなかった・・・。」



あそことはきっと青学のことだろう。

青学のマネージャーだと訊いた。



「私は弱いの。」


「・・・。」



何も俺は言えなかった。

ただ涙が溜まった瞳を見つめていることしか・・・。

弱いのは俺も同じ。




 







アクセス解析 SEO/SEO対策