* 氷の城に迷い込んだ姫君 *
「青学には私ともうひとりマネージャーがいたの。」
淡々と話し出す。
「って言ってね、すごく綺麗な子。」
声に涙が含まれていく。
「綺麗で、みんなの中心だった。」
「・・・。」
「みんなさんのことが好きだった。」
「・・・。」
「いつも綺麗な笑顔でドリンクを渡したり、タオルを渡したりしてた。」
「・・・お前だってマネージャーだったんだろ?」
「うん、ドリンクを作ったり、お洗濯をしたり・・・表の仕事は全てさんだったから・・・。」
話の内容はわかった。
見えていないところの仕事をする。
見えている仕事をするという名の女。
どうせ、ほとんどのヤツは見えている仕事をしているヤツの味方をする。
「だからみんなに嫌われちゃってね。」
「・・・。」
「毎日繰り返される私への言葉に耐えられなかった。」
どうせ、子供じみたイジメ。
それでも・・・の心を傷つけた。
「私は弱いの。」
「・・・。」
「だから私は必要とされなかったから・・・逃げたの。」
だからは氷帝に転入してきた。
自分への罵声から逃れるために。
「ね、関わらないほうがいいとおもったでしょ?
氷帝は青学と関わることもある、青学に嫌われている人間がいれば迷惑だもの。」
「・・・。」
「じゃあそろそろ私は行くね。話聞いてくれてありがとう。」
初めて笑顔を見た。
柄でもないが、可愛いと思った。
守りたいと・・・。
「待てよ。」
「・・・どうして?」
「言ったはずだ、逃がさないって。」
「でも、私の話を聞いたでしょ?」
「ああ。」
「どうしてそんなこと言うの?」
は悪くない。
悪いのは気づかなかった青学の奴ら。
それと・・・青学の奴らに何も言わなかったという女。
全て俺の想像でしかないが、気に入らない。
「・・・お前を必要としている場所は、ここにある。」
「え?」
「傍にいればいい、俺の。」
「・・・言ったでしょ・・・ナルシストは嫌いなの。」
「・・・。」
「嘘よ、優しいね・・・・・・景吾。」
名前で呼ばれた。
初めて。
嬉しいと思った。
「呼べるじゃねぇーか。」
「・・・本当にあなたは私に居場所をくれますか?」
「ああ。」
「一緒にいさせて下さい。」
俯いて小さな声で言う。
俺が守る、もう誰にも傷つけさせない。
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