* 氷の城に迷い込んだ姫君 *
「みんながさんを必要とすることくらいわかってたの。」
伏せ目がちに言う。
大きな瞳に溜まった涙は流れない。
流れない涙は強い心の表れ。
『みんなードリンクだよー!』
『ありがとにゃ!』
『ありがとうっす!』
『・・・どうも。』
『が来てからドリンクも美味いにゃ!』
『さっすが先輩っすね!』
『いつもありがとうございます。』
『いえいえ、どう致しまして!』
『やっぱの笑顔はいいにゃー。』
『先輩じゃこうはいきませんよねー。』
『ほんとほんと、は可愛いけど運動神経ないし。』
さんは運動神経抜群。
私は運動神経がない。
さんは要領がいい。
私は要領が悪い。
みんなが必要とするのは間違いなくさん・・・。
『今日のドリンクはどうしようかなぁ。』
ドリンク作りは私の仕事。
さんが来てから渡す役目がなくなったら時間に余裕ができた。
今のドリンクも私が新しく考えたもの。
『お洗濯もしなくちゃ・・・。』
お洗濯も、全部私の仕事。
さんの仕事はみんなに笑顔を向けること。
ドリンクを渡したり、タオルを渡したりすること。
みんなさんの綺麗な笑顔を求めているから。
『。』
『周助ー?』
『手伝おうか?洗濯。』
『ダメでしょ、青学のレギュラーさんが。
それに私より頑張ってるのはでしょ?みんな言ってるもの。』
『僕は気づいてるよ。』
『・・・何を?』
『が頑張ってること。
この前は調理室でドリンク作ってたよね?いつもみんなの見えないところで頑張ってる。』
『見られてたんだ・・・。』
『気づいてるのは僕と手塚くらいじゃないかな。』
『うん、国光にはこの前バレた。』
『どうして言わないの?自分がドリンク作ってること。』
『別に言うことじゃないでしょ。
それに・・・みんなさんが作ってるドリンクって思ってるほうがいいと思う。』
『・・・。』
『菊丸くんとか桃城くんの顔を見てたらわかる。
みんなすごく幸せそうだもん、それに・・・美味しいって言ってくれるのはやっぱり嬉しいもん。』
『は優しすぎるよ。』
『優しくないよ、私は。』
『僕は気づいてるから、頼って。』
『・・・・・・ありがとう。』
周助は優しかった。
私のことをわかってくれた。
周助だけじゃない、国光も。
ふたりがいるから私はやっていけると思った・・・。
『なんでってマネやってるんだろー?』
『必要ないっすよね、先輩って。』
『そうそう、がいれば全然オッケー!』
『先輩が来てから、先輩が働いてるところなんて見たことないし。』
『俺も俺もー。』
『サボってるんじゃないっすか?』
『え?それってかなりひどくない?
はみんなに笑顔でドリンク渡したりしてくれてるのに!大変なのに!』
『先輩がやめれば俺だって手伝えるのにー。』
『そうだよにゃー。』
私はここには必要ない。
ふたりの言葉、それがみんなからの言葉のように感じた。
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