* 王子の興味の行方 *
「あ・・・。」
あの人を見つけた。
壁に掛けられている歴代のレギュラーの写真の中に笑ってるあの人がいた。
不二先輩と部長に挟まれて。
「越前くん、何やってんの?」
「あ、スイマセン。」
先輩。
いつも先輩たちの中心にいる。
青学のマネージャー。
「写真見てたんだ?」
「こんなのあったんですね。」
「試合の後とかに撮るらしいよ。これは去年のだし。」
「ふーん。」
「でも、せっかくだし新しいの飾ればいいのにねー。私と越前くんも写ってるやつ。」
この人にはあの人のことは訊けない。
俺の中の何かがそう言っている。
訊くならきっと不二先輩が部長。
あの人はあのふたりの間にいたから。
「じゃあ俺練習行って来るっす。」
「頑張ってねー。」
みんな綺麗だって言ってる。
確かに綺麗かもしれない。
でも・・・写真の中で微笑むあの人のほうがいい。
気になった、あの人が。
少なくとも青学に関係しているあの人。
「越前、試合だよ。」
「誰とっすか?」
「僕とだよ。」
「ふーん・・・ねぇ不二先輩。」
「何かな?」
「『』って人、知ってる?」
「・・・・・・越前、誰に訊いたの?」
「知ってるんだ。」
「知ってるよ。でも、ここでその名前をあまり出さない方がいいよ。」
「何で?」
「詳しく知りたい?」
「教えてくれるなら。」
「・・・教えてあげるよ。」
「不二!越前!何をしている?」
「手塚が審判?」
「ああ。」
「越前ね、に逢ったんだって。」
「・・・何だと?」
「へぇ・・・部長も知ってるんだ。」
「知りたいんだって、のこと。」
「・・・・・・。」
「教えてもいいよね?」
「・・・ああ。」
「じゃあ今日帰りに話してあげるよ。もちろん手塚も付き合うよね?」
「ああ。」
「じゃあ決まり、越前・・・英二たちには内緒だよ。」
「誰にも言いませんよ。」
「それならいいよ。」
「試合始めるぞ!」
「うぃーす。」
話してくれる人は決まった。
少なくともこの人達は大丈夫だと思う。
あの人のことを想ってる。
「大石、後は頼む。」
「ああ、お疲れ様。」
「じゃあ僕も帰るね。」
「お疲れ様です、不二くんv」
先輩が不二先輩に声を掛ける。
不二先輩も笑顔で応える。
「さんもお疲れ様。」
それでも何となく違和感を感じた。
多分そう感じているのは俺だけ。
「オチビーどっか寄ってく?」
「今日は帰るっす。」
「じゃあ桃ー。」
「付き合いますよ♪もちろん英二先輩の奢りっすよね?」
「えぇー!」
「それじゃーお疲れ様でした。」
不二先輩と部長より少し遅れて部室を出る。
誰にも悟られないように。
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