* 甘味誘惑 *
「若ー!」
「なんですか、先輩?」
「あのね、あのね!」
「はい。」
「ケーキバイキング・・・嫌?」
「はぁ?」
「あのね、駅前のケーキ屋さん知ってる?」
「・・・すみません、知りません。」
「ううん、知らなくてもいいの。そこでね、ケーキバイキングやってるの。」
「・・・はい。」
「10人以上で行けば半額なの。だから・・・みんなで行かない?」
「行きます。」
「本当!」
「はい。」
「ありがとう、若!」
どうしてこの人はこんなに笑顔が綺麗なんだろう。
本当に可愛らしい笑顔。
「やったv二番目の難関も突破ー!」
「・・・難関?」
「うん、景吾と若が難関なの。」
「・・・?」
「だってふたりともあまりそういうの好きじゃないかなぁ・・・って。
でも、やっぱりふたりとも優しいね。そういうところすごく好きだよ。」
この人は平気で好きという言葉を言う。
それはとても心地よいもので・・・俺も否定することはできない。
先輩の誘いを断れる人なんてこのテニス部にはいないだろう。
それほどこの人は俺たちの大切な存在、守るべき存在。
「若?」
「あ、すみません。」
「ううん、考えごと?」
「はい。」
「そっか、じゃあ私はみんなにも伝えてくるね!」
「手伝いましょうか?」
「ううん、発案者は私だから責任を持って私がちゃんと伝えます。」
「そうですか、頑張ってください。」
「うん、ありがとー!」
「やん、何やってるん?」
「あっ侑士、ちょうど良い所に!」
「なんや、俺に用か?」
「うん、用なの。」
「言ってみ。」
「ケーキバイキング!」
「あーそういや駅前のケーキ屋でやってんな。」
「あのね、10人以上で行くと半額なの!」
「そうなん?」
「そうなのー。だから行こう?」
「構わんで。」
「よかったーv」
のお願いは何でも叶えたる。
些細なことでも、大変なことでも。
甘いな、俺も・・・まぁええわ。
それでも、この姫さんが笑っていられるんならそれでええ。
「他の奴らには伝えたん?」
「ううん、あとはジローと萩之介と宗弘と長太郎に伝えなきゃ!」
「手伝ったろか?」
「大丈夫!」
「無理しんときや。」
「もう、侑士も景吾に負けないくらい心配性なんだからー。」
「うちの姫さんは危なかしいからなー。」
「むぅ・・・そりゃ、階段から落ちそうになったり、何もないところでこけそうになったりするけど・・・!!」
「またこけそうになったんか?」
「うん、ちょうど長太郎がいてこけないですんだけど。」
「そやったらいいわ。」
「気をつけなきゃねー。」
「危ないことするときは俺たちがいるところでにしときや?」
「・・・ありがとうね、侑士。」
「ホンマに気を付けや!」
「うん!」
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