* 大切なお姫様 *
「ホンマに覚えてへんの?」
「あーん?何のことだ。」
「ちゃんのことや。」
「覚えてねぇーよ、あんな一般人。何で俺が庇ったのかすらわかんねぇ・・・。」
ホンマに、覚えてへんねんな・・・。
お前がちゃんを庇ったんはちゃんを愛してるからに決まってるやん。
「・・・もうちょっと休んどき、どうせあと1時間や、部活には出るんやろ。」
「あぁ、当然だろ。」
「じゃあ俺も行くわ。」
ちゃんを追いかけなあかん。
絶対あの子は泣いとるから・・・・・・。
「悪かったな。」
その言葉は俺じゃなくてちゃんにかけるべきやで。
ホンマにお前のこと心配してたんやから・・・・・・。
「ちゃん!!」
「・・・忍足、くん・・・?」
やっぱりちゃんは泣いとった。
保健室を出てすぐ隣にある階段の端っこに座って。
「大丈夫か?」
「うん?何が?」
大丈夫だよって顔しとる・・・。
でもな、カナリ痛々しすぎるで・・・・・・。
「跡部のことや・・・・・・。」
「大丈夫だよーだって今までのことが全部夢だったんだもん。
やっと夢から醒めることが出来たんだよ、少し醒めるにまでに時間がかかっちゃったんだね。」
「じゃあその涙はなんなん?」
無理したあかん。
ちゃんはホンマに優しい子や。
優しいからこそ傷つきやすい・・・・・・。
「えっと・・・・・・。」
「ここやったら誰もおらん。泣きたいだけ泣いたらええ。」
この役目は本当は跡部や。
でも、今は仕方ないやろ?
忘れてしもたお前が悪いねん。
「・・・っぅ・・・ねぇ、忍足くん・・・っどうして景吾くんは私のこと忘れちゃったんだろう・・・っ」
「・・・・・・。」
「私のこと、本当は嫌いだったのかなぁ・・・・・・?」
「それはないと思うで。」
跡部がちゃんを愛してたのは紛れもない事実。
あの跡部がちゃんと付き合うことになって・・・
いや、ちゃんのことを好きになってから跡部は変わったやん。
もちろんいいようにや、跡部を変えれたんはちゃんの力や。
いつも一緒にいたやろ、跡部とちゃんは。
それは跡部もちゃんを愛してた証拠や。
「でも・・・・・・。」
「ちゃんは跡部のこと好きなんやろ?」
自分のことを忘れられてても跡部のことをちゃんは想ってる。
ちゃんのことを好きな俺にとってはこの状態はラッキーなんかも知れへんけど・・・・・・
今、このちゃんを見てたらそんな考えは吹き飛んだ。
ちゃんは跡部の前でいつもよりさらに輝いてた。
その輝いてるちゃんに俺は惚れたんや。
「うん、好きっすごく好きなの・・・っ」
「今は辛いかも知れへんけど・・・その想い忘れたらあかんよ。」
「うん・・・っ」
「跡部もすぐに思い出すやろ。
めっちゃちゃんのこと溺愛しとったやん、跡部。」
俺等がちゃんに話しかけるだけで不機嫌やった。
もちろんちゃんの前ではいつも優しい顔しとったけどな。
「ありがとう・・・・・・。」
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