* 大切なお姫様 *
「あの女・・・誰だ・・・?」
どうしてあの女だけが思い出せない?
同じクラスだと言った。
意味はないが一応クラスの人間は全員覚えている。
でも、あの女の記憶がない。
あの女だけが・・・・・・。
泣いていた。
俺の名前を呼んだ。
だが俺はあの女の名前すら思い出せなかった。
「あれー?ちゃん何やってんのー?」
いつもなら絶対に跡部が傍にいて。
なおかつ部室の中にいるはずのちゃん。
でも、今日は違う。
コートに近い木の下に座ってる。
「あっ芥川くん?」
「コート入って来ないのー?」
「うん、今日は外にいるの。」
おかしい。
跡部がちゃんをこんな場所にひとりにするとは思えない。
だってここからはコートが見えないから。
「ふーん・・・もしかして跡部と喧嘩でもしたー?」
「・・・・・・っぅ・・・」
突然、ちゃんが俯いてしまった。
声を殺して、泣いてる。
俺が泣かせた?
「ご、ごめん!!俺、別にちゃんを泣かせるつもりはなかったんだよー!!」
そんなことしたら跡部に殺されるCー!
「ごめんね・・・あのね、景吾くん私のこと忘れちゃったの。
もう、景吾くんと一緒にいれないの、だからここに来ちゃった・・・ダメだよね。」
「忘れた?!」
跡部が、ちゃんを?
そんなこと絶対にありえないCー!!
「うん。」
「何で?!」
「私のこと庇って、一緒に階段から落ちちゃって・・・・・・。」
「・・・・・・。」
跡部がちゃんを忘れた・・・・・・?
あの跡部が、大切に、大切にしてるちゃんを忘れた・・・・・・?
「私、帰るね。部活頑張ってね。」
「待って!」
俺は帰ろうと立ち上がったちゃんを止めてしまった。
ちゃんの瞳が「淋しい。」っていってるような気がしたから。
今、ちゃんをひとりにしちゃダメだと想ったから・・・・・・。
「一緒に帰ろ!」
「でも・・・・・・。」
「お願い!もうちょっと待ってて!」
「・・・・・・。」
「ダメ?」
「ううん、じゃあここで待ってるね。」
「ありがとうー!」
部活が終わって、いつも通り車を待たせてある門まで向かう。
何故だろうか。
違和感を感じる。
「・・・景吾様、様はご一緒ではありませんのか?」
「・・・誰だ?」
「・・・・・・っ!」
何故俺の目の前にいる運転手は驚いたような顔をしている?
・・・・・・。
そういえばあの女の名前もだったな・・・・・・。
関係あるのか?
・・・・・・多分、俺には関係ないだろう。
「早く出せ。」
「・・・・・・畏まりました。」
「ちゃん、お待たせ!」
「芥川くんに・・・忍足くん?向日くんも宍戸くんも・・・?」
「せっかくだCーみんなで帰ろうと想ったんだ!」
「ちゃん、俺もいいか?」
「う、うん。」
「みんなで帰ったほうが楽しいって!」
「そうだね、じゃあ・・・是非みんなにご一緒させてください。」
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