* 全てが夢物語 *
あの女は隣の席の女だった。
何故、自分に近いはずのこの女のことを俺は知らないのであろう。
「今日の日直は跡部とだ。」
チッ・・・ついてねぇ・・・。
よりにもよってこの女と日直か・・・。
まぁいい。
どうせ俺が出る幕じゃねぇ。
全てこの女がやってくれる筈だ。
日直になった時はいつもそうだ、相手の女がやってくれる。
「日直!次の教科で使う道具取りに来い!」
教科担当の教師が言う。
でも俺は動かない。
隣の女が立ち上がった、当然だ。
そして教室から出て行った。
何故だ?
どうしてこんなにも物足りなさを感じる?
誰に?
・・・あの女にか・・・?
いや、ありえない。
あの女はただの一般人。
俺が相手にするはずもない。
もっといい女はいくらでもいる、今もそうだ女共が俺の周りを囲んでいる。
「宍戸くん、ありがとう。」
「気にすんな。・・・ったく跡部は何やってんだよ。」
「・・・仕方ないよ、だって遠い存在の人だもん。」
「・・・。」
「手伝ってくれて本当にありがとうね。助かっちゃった。」
宍戸と一緒に入ってくる姿が見えた。
何故だろうか、苛立ちを感じる。
一体誰に対して・・・・・・?
「日直!黒板消しておけ!」
教師が言う。
でも、やはり俺が動かない。
また、隣の女が動く。
消したのはいいが小柄な身長のせいか上の方の文字が残ってしまっている。
俺が行くべきなのか?
「ちゃん大変そうやなー。手伝ったるわ。」
「忍足くん・・・?」
「上の方消せへんやろ。」
「うん、ごめんね・・・。」
「気にしんといて、俺が好きでやってることやから。」
「ありがとう。」
忍足が入ってきて黒板を消していた。
何故俺はこんなに苛付いている?
一体誰に対して?
「・・・悪かった。」
黒板を消し終わって戻ってきた隣の女に何となく声をかけた。
女は呆然として俺を見ている。
俺がこんな言葉をかけるのは不思議か?
「ううん、跡部くん忙しそうだったし・・・気にしないで。」
突然目の前のただの女が笑った。
初めて見た笑顔のはずなのに・・・懐かしいものを感じた。
可愛いと俺に思わせるほどの笑顔・・・・・・。
「ちゃん迎えに来たでー!」
「おい、忍足。どこ行くんだよ。」
「屋上や、ちゃんと一緒にメシ食うねん。」
「「「・・・・・・。」」」
「じゃあ、俺等行くわ。」
「・・・・・・。」
「あ、あの・・・もしよかったら跡部くんも一緒に・・・。」
「ちゃん?!」
「みんなでご飯食べるの楽しいと思うの。」
前にも誰かに同じようなことを言われたような気がする。
その時は頑なに拒否した。
そいつと2人でいたかったから・・・・・・。
確かそいつもそれで納得してくれたような気がする。
一体誰が俺にそんなことを言った?
「あ、あの・・・?」
「・・・わかった、俺様も行ってやる。」
また笑った、この女。
どしてだろう、この笑顔を見ていたいと思った。
この俺様が。
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