* 全てが夢物語 *










「お待ちどーさん。ちゃん、これでええ?」


「うん、ありがとう。」



まさか先輩のことを跡部さんが忘れているとは思わなかった。

だって、ふたりは本当にお似合いだった。

俺も先輩の事好きだったけどそれは跡部さんと先輩が付き合うようになってから。

跡部さんと一緒にいるときの先輩の笑顔が好きだった。



「どうぞ。」


「悪いな。」



跡部さんにコーヒーを渡す。

俺はちゃんと普通の顔を出来ていただろうか。

どうして忘れてしまったんですか?

先輩のこと、本当に愛していたはずなのに・・・・・・。





キーンコーンカーンコーン





「あっチャイム。」


「教室もどろか。」


「次サボる。」



そう言う跡部さん。

いつもなら先輩が「ダメ」って言う。

でも、今日は言わない。

先輩は言わないんじゃない、言えないんだ・・・・・・。



「サボったらあかんで、跡部。なぁーちゃん?」


「そ、そうだよ、ちゃんと授業でなきゃダメだよ?」


「・・・チッ・・・わかったよ。」



あっ・・・いつもと同じだ。

・・・忍足さんはいつもと同じ雰囲気を出そうとしている。

跡部さんが先輩のことを思い出せるように。





















ちゃん。」


「どうしたの、忍足くん?」


「いつも通り話しかけてみ?」


「え・・・。」



前を歩いている跡部さんに聞こえないように忍足さんが先輩に言う。

ちょうど後ろを歩いてた俺には聞こえた言葉。



「そうしたら思い出すかもしれんやろ、自然に。」


「でも・・・やっぱり私が話しかけたりしたら迷惑じゃ・・・」


「大丈夫やって!な?」


「・・・うん、ありがとう忍足くん。」


「やっぱりちゃんは笑顔の方がええな。」


「・・・///」


「跡部にも笑いかけたり?」


「・・・・・・頑張る。」


「その調子やで。」



忍足さんも先輩のことが好きなはずだ。

でも、跡部さんが先輩を思い出せるように考えている。

忍足さんは先輩の幸せを願ってるんだ。

これがこの人の優しさ。



。」


「は、はい!」



跡部さんが先輩のことを苗字で呼んだ。

やっぱり違和感を感じる。

跡部さんが先輩の名前を呼ぶときはいつも愛が籠もってた。

本当に愛してるんだなぁ・・・って思った。



「次の授業の後は俺様が黒板消してやるよ。」


「・・・ありがとう!」



あ・・・先輩が笑ってる。

いつもの笑顔。

俺が大好きな笑顔だ・・・。



「優しいやん、跡部。」


「うるせーよ。」



忘れてても、跡部さんは先輩のことを想っているのかもしれない。

あの跡部さんだからこそ、こんな言葉言わない。

本当に想っている人以外には・・・・・・。

跡部さんは忘れてても先輩のことを愛してるんだ・・・・・・。




 







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