* 動き出した歯車 *










「あっさん、ちょうどいいところに!」



移動授業の帰りに声をかけられた。

同じ学年の女の子たちに。



「ごめんね、あのもしよかったら手伝ってもらえないかな?」


「木の上に大切な紙が飛んで行っちゃったんだけど、届かなくて・・・」


「梯子借りてきてんだけど私たち高所恐怖症で・・・」



「じゃあ私が取りましょうか?」



「いいの?!」


「じゃあお言葉に甘えてもいい?!」



「はい。」



わざわざ梯子を立てかけてくれる。



「どの辺にありますか?」



「その木の上くらい!」


「そっちの枝の方に乗った方がいいと思う!」


「気をつけてね!」



少し太めの枝の上に乗る。

あ・・・あった。

白い小さな紙。





ガタンッ





「これですか・・・?」



紙を取って女の子たちに見せると彼女たちは笑ってた。

そんなに喜んでくれてるのかな?



「アンタ馬鹿じゃない?!」



「え?」



突然言われた言葉。



「跡部様に話しかけてもらえなくなったからって他のレギュラーのみんなに手を出すなんて最低!」


「迷惑してるのよ、彼らだって!」


「梯子は私たちが直しておいてあげるから後は好きにどうぞ!」


「そうそう!降りれるなら降りればー?」



「あの、この紙は・・・?」



「見てみなさいよ!」


「別に大切な紙でも何でもないわよ!」



小さな紙を見てみるとそこには・・・

”馬鹿な女”

と書かれていた。



「うーん・・・どうしよう?」



今日はあとはHRだけ。

どうしよう?

誰か助けてくれないかな・・・・・・。

違う、誰かなんて今の私にはいないんだ・・・。

前までは景吾くんがいてくれた。

でも今は・・・・・・私を助けてくれる人なんて誰もいない。




















移動授業の後、隣の席のがいない。

何故だ?



「跡部、は?」



「知りません。」



「そうか・・・悪いが捜してきてもらえるか?」



「・・・わかりました。」



何故かはわからないが面倒だとかは思わなかった。

普段の俺なら誰かを捜しに行くなんてこと自分ではしない。

大抵は誰かにやらせる。



「・・・・・・俺らしくもねぇーよな。」



廊下に出て一言呟く。

本当に俺らしくもねぇ・・・。





















「誰も通らないものなのかなぁ・・・?」



やっぱりHR中だし?

ここからテニスコートは遠いもの。



!」


「え・・・・・・?」


「何やってるんだよ、お前。」



来てくれた。



「えっと・・・あの・・・。」





ヒラヒラ





あの紙が落ちる。

その紙を景吾くんに拾われてしまう。



「何だよ、これ。」


「えっと・・・話せば長くなっちゃうの・・・・・・。

あの、迷惑かけてすごく悪いんだけど・・・梯子借りてきてもらえませんか?降りれないの。」


「飛び降りろよ。」


「で、でも・・・・・・飛び降りるなんて怖くて出来ない・・・。」


「俺様が受け止めてやる、だから飛び降りろ。」


「・・・・・・え?」


「絶対に受け止めてやる。」


「・・・うん。」



飛び降りた私を景吾くんが受け止めてくれる。



「大丈夫か?」


「うん、大丈夫。ありがとう・・・。」




 







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