* 強い信頼 *










「あのね、赤也。」


「なんっすか?」


「私のこと嫌いになる?」


「え?」


「もしね、私がすごく悪い人間だったら・・・私のこと嫌いになる?」


「どういう意味っすか?」


「そのまま、私がすごく悪い人間だったり、罪人だったり・・・」


「・・・わかんないっす。」


「・・・。」


「それだけの説明じゃわかんないっす。」


「なら・・・私の話聞いて?」



あの時みたいだ。

儚く弱々しい顔・・・。



「・・・はい。」



俺は返事しかできなかった。




















「私ね、人に触れられたことってあまりないの。」


「え?」


「人に触れられるのが怖かったの。」


「・・・。」


「母親がね、私を見て殴るの。顔を合わせる度に殴られて・・・。」


「・・・。」


「それ以来人に触れられるのが怖いの。」



俺はすごく悪いことをしているような気がした。

スキンシップと称して先輩に抱きついたりしてた。



「でもね、母親が死んでからは・・・人に触れられたくなった。

その時、私の心を一番にわかってくれたのが幸村ちゃん。抱きしめてくれたの、優しく・・・。」


「・・・。」


「すごく、嬉しかった・・・。」


「・・・。」


「でもね、母親が死んだのは私のせい。自殺だったの。

私という存在が母を苦しめていた。母が死ぬより・・・私が死ねばよかった・・・。」



抱きしめた。

強く、強く。



「・・・赤也?」


「・・・。」



何も言えない。

ただ抱きしめる力を強くする。



「赤也が抱きしめてくれるのも、嬉しいよ?」


「・・・。」


「ねぇ・・・私のこと嫌いになった?」


「何で?」


「え?」


「何でそんなことで嫌いにならないといけないわけ?」


「・・・。」


「別に先輩のせいじゃないし。」


「私のせいだよ・・・。」


「絶対に先輩のせいじゃないって。」


「・・・。」


「俺、先輩のこと好きっすよ。」


「え?」


先輩にお願いされても嫌いになんかならない。」



だから安心して?

俺は先輩のこと嫌いにならないよ。



「・・・本当に、立海のみんなは優しいね。」



”みんな”つまり先輩たちにもこの話をしたということ。

多分、みんな答えは同じ。

先輩を嫌いにならない。



「大好きだよ。」



でも、先輩のその言葉訊けたから・・・

気にならなかった。



「ありがとうね。」



抱きしめる力をさらに強めた。

先輩は俺に触れられることを拒絶しないから。




 







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