* 優しい手 *
「私、幸村ちゃんに逢えて本当によかった。」
「、急にどうしたの?」
「・・・何となく、ね。」
きっと幸村ちゃん気付いてるだろうなぁ・・・
真田ちゃん辺りが話してるだろうし。
わかってたはず、私が来ることも・・・。
「幸村ちゃん・・・甘えてもいい?」
「いいよ、おいで。」
「わぁーい・・・っ」
立ち上がってくれた幸村ちゃんに抱きつく。
頭を撫でてくれる、優しい手が好き。
「・・・好き、大好きだよ・・・幸村ちゃん!」
『・・・さん?』
『ゆ・・きむ・・ら・・・くん?』
『こんなところで何をしているの?』
『ゆ、幸村くんこそ・・・。』
公園のベンチに座っていたのは同じクラスで隣の席のさん。
初めて話した。
『ちょっと買いものにね。』
『そっか・・・。』
電灯に照らされているさんの手には無数の傷があった。
それも最近、付けられたもののように思える。
『その手・・・』
『な、なんでもないの・・・っ』
顔には涙の痕。
それに赤く腫れあがっている。
『・・・ゆ、幸村くん!早く帰らないとお家の人が心配するよ?』
『それはさんだろう、女の子なんだしね。』
『・・・私は心配なんてされない・・・。』
『え?』
『ううん、何でもない。』
『君が帰らないなら俺も帰らない。』
『・・・・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・でも、心配するよ、本当に。』
『大丈夫だよ、俺の家はすぐそこだから。』
『・・・・・・。』
『・・・・・・。』
『・・・私、今日はずっとここにいるよ?』
『どうして?』
『・・・・・・家に帰れないから。』
油断したら聞き逃すような声で彼女は言った。
『帰れない』と。
『だから幸村くんは帰って。』
『・・・・・・俺の家においで。』
『え?』
『ここにいるなんて危ないよ。』
『別に、いいの。』
『俺がよくないよ。』
『・・・。』
『行こう?』
それでも彼女は立ち上がろうともしなかった。
ただ俺を見るだけ。
『さん?』
『・・・あなたはどうしてそんなに優しいの?』
俺を見ながら彼女は涙を流した。
その涙が本当に綺麗だった。
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