* 優しい手 *
『・・・さん。』
『幸村くん・・・。』
3日ぶりに彼女が来た。
『もう、大丈夫なの?』
『うん、ありがとう・・・本当にごめんね。』
『・・・。』
『ちょっとお話訊いてもらってもいいかな?』
『もちろん、お昼でいいかな?』
『・・・ありがとう・・・。』
『父親がいたの。』
『・・・それは実の?』
『うん、正真正銘、私の父親・・・写真で見ただけだった。死んだと訊いていたのに・・・。』
『・・・。』
『今一緒に住んでるの、すごく優しいよ。
あのね、母親は自殺だった。私のせいで死んじゃったの・・・っ』
『・・・。』
『母親にとって私は重荷だった。私のせいで・・・死んじゃったの。』
涙を溜めている彼女を抱きしめた。
『・・ゆき・・むら・・・くん?』
『ごめん、嫌だった?』
『ううん・・・。』
『何となく、が抱きしめて欲しいんじゃないかと思ってね。』
『・・・・・・え?今、何て?』
『・・・名前で呼ばれるのは嫌かな?』
『ううん・・・すごく嬉しい。あのね・・・ずっと触れられるのが怖かった。
でも、幸村ちゃんは怖くなかった・・・優しかったから・・・暖かかったから・・・っっ』
を抱きしめる力を強めた。
それを彼女はきっと望んでいるから。
『ありがとう、幸村ちゃん・・・・・・・っ』
初めての笑顔を見た。
守りたい。
そう思えるような可愛くて、儚い笑顔だった。
『これからも俺を頼ってくれていいからね。』
『・・・本当にいっぱい頼っちゃうよ?』
『いくらでもどうぞ。』
初めは近寄りづらかった。
誰とも話そうとしないいつもひとりでいるような印象。
でも今は違う。
いつの間にかは俺の一番大切な女の子になっていた。
「幸村ちゃんって本当に優しいよねぇ・・・。」
「突然だね。」
「うん、初めて話したときのこと思い出したから・・・。」
「・・・。」
「あの時は色々とお世話になりました。」
「気にしないで。」
「ありがと。」
「そういえば、気になってたんだけど・・・。」
「ん?なぁに?」
「どうして俺のこと幸村ちゃんって呼ぶの?」
「・・・ちゃん付けが気になる?」
「うん。」
「私ね、同じ年で好きな人はちゃん付けで呼ぶの・・・。」
「じゃあ俺のこと好き?」
「うん、大好き!」
「俺ものこと大好きだよ。」
の好きはLikeの好きかも知れない。
それでも構わない。
いつまでも笑っているのなら。
この笑顔が消えることがないのなら・・・。
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